1.タイ法人の設立形態
一般的にタイへの進出には、①会社法人、②駐在員事務所、③地域統括事務所、④支店の4形態があります。日系企業がタイへ進出する形態として最も多いのは、会社法人の設立です。この場合には、現地企業との合弁または独資(100%出資)のケースがあり、タイ国内マーケットへの参入を志向する場合には合弁を選択する場合が多く、製造業や輸出入関連の場合には、独資を選択する場合が多いです。駐在員事務所も利用されますが、情報収集や市場調査のための活動拠点であり、営業活動ができないことに注意が必要です。
2.外資規制(外国人事業法)
外国資本額が50%以上は外国法人となり、タイ法人となるにはタイ投資額が50%超でなくてなりません。タイ法人は外国人事業法の規制は受けず、規制業種(製造業以外ほとんどの業種)でも参入可能となります。製造業は規制業種ではないので独資(外国資本額100%)でも参入可能ですが、タイの製造業と日本の製造業の範囲の違いに注意してください。具体的にはOEM生産や受注生産、顧客がデザインや設計した製品の製造の請負は「工場の設備と作業員を提供するサービス業」とされ、製造業とはみなされません。これは生産設備の有無には関係ありません。
サービス業では、日本49%、タイ48%、タイ3%(銀行や会計事務所)の出資比率で設立するケースが多く、その場合、支配権の維持には、①タイ持ち株会社(タイ法人51%と日本親会社49%)51%と日本親会社49%による事業会社設立、②優先株、③定款規定(52%以上の賛成により議決する旨)などのスキームが利用されます。
3.ワークパーミット(労働許可)の要件
外国人がタイで労働する場合にはワークパーミット(労働許可)を得る必要があります。取得条件としては、①月給が5万バーツ以上、②会社の払込資本が、外国人一人につき200万バーツ以上、③外国人一人につき、タイ人従業員4名以上雇用、④会社の前年度の財務諸表に監査人が、事業の継続に関する限定意見を表明していないこと、⑤付加価値税、源泉所得税、社会保険料の申告を毎月行っていることなどがあります。
4.不正対策
他のアセアン諸国と比べると少ない方かもしれませんが、タイでも、不正は頻発しています。人材不足による長期にわたり同じ業務に従事する結果、統制上の弱点を熟知してため、少額の金額を長期にわたり継続的に行われることが多いです。事例としては、①スクラップの横領(販売量以上のスクラップの横流し、計量時の不正)、②購買が親族名義の会社を設立、高値の納入品を継続的に購買、③購買が高品質の部材を注文し、後でキックバックを受けるため低価格品を納品、④人事が退職した従業員を給与台帳から削除せず、口座番号を自身の口座に改ざんが挙げられます。対策としては、やはり社内規定の整備と内部統制の構築になります。また定期的にチェックすることも重要です。
5.会計記録担当者
タイの財務諸表には、会計記録担当者のサインが必要です。会計記録担当者は、①タイ国内に居住し、タイ語の能力を有し、禁固刑の最終判決を受けていないもの、②4年制大学卒業以上かつ会計に関する学科を修了しているもの、③3年間で27時間以上のセミナー受講、の全ての要件に合致するものでなければなりません。